暮らしていた人の想いを残したい 《古民家改修事例①》

暮らしていた人の想いを残したい

築160年、江戸後期の古民家が甦りました。
建物を骨組みの状態まで解体し、使える木材は生かし、
補う木材は国産の良材、壁は本来の漆喰仕上げ。
古の構造の良さを生かしながら、現代の快適性を付加しました。

再生部床面積:225.67㎡(68.12坪)
再生範囲:家屋全体のスケルトン改修。

※曳家を行い、脚周り補強のためRC基礎を新設。
※完全平屋の民家を、2階屋に変更。
※床暖房を導入。

改修前の様子

長い歴史の中、生活の変化に対応してゆく必用があります。
そのためのリフォームがつぎはぎに繰り返された状態でした。
一般的に古民家の間取りは現代の生活と馴染まないものがあります。
そういった部分を暮らし易くするためだったのでしょう。
広い土間を塞いで上がりの空間にしたり、
建具ばかりだった間取りに壁を設けて区分け出来る様にしたり、
台所や浴室・トイレなどの水場を機能的なものにしたり..。
ですがその都度の対応なので、全体的・長期的な視点が不足しがちです。
またその時のやり易さ、使い易い素材などもあったと思われます。
本来表しだった柱や梁は大きく覆われ、新建材が補われていました。
往時の豪快さを表面的に隠してしまったとも言えます。
それでも歳月が刻まれた存在感はひしひしと感じられました。
 

計画に当たっては先ず古民家の健全性を確認する作業が必須です。
基本的には床下と小屋裏など、普段見えない部分の調査となります。
中でも何より重要なのが床下。
床下の状況如何で先々の計画が大きな影響を受けることとなります。
 

解体1:茅下ろし

創建当初は茅葺きの屋根で、近年になって上から板金の屋根で覆い保護されていました。
その板金を剥ぎ、下に眠っていた茅を少しずつ手作業で降ろして行きます。
とても時間のかかる作業でしたが、現われた骨組みの外観には構造美を感じました。
最終的に屋根の骨組みはリニューアルしてしまいましたが、160年前の職人達の息遣いが聞こえるようでした。

解体2:本体の解体

屋根に引き続き、本体も少しずつほぐして行きます。
小型の重機も併用しましたが、慎重な作業を要します。
解体は全体で1ヶ月半とちょっとを要し、骨組みの全貌が表れました。
  

解体3:曳家

この古民家、調査では床下の状況に大きな問題点が見られずひと安心でした。
ですが施主様の話によると、建物の建つ部分が周辺の土地よりも低めになっている模様。
大雨の際に浸水するという訳ではありませんが、浸透した雨水による湿気が非常に気になっていたそうです。
そこで、曳家によって持ち上げベタ基礎を新設する事に。
建物に今後の安定性を持たせる事も含めて考えました。
曳家というと別な場所に引っ張って行く事を想像しがちですが、今回はその場での上げ下ろしです。
鉄骨レールを流し、幾つものジャッキで少しずつ持ち上げて行きます。
井桁に角材を組んで支持ポイントを設け、人が入って作業可能な空間をつくりました。
 

 

ベタ基礎をつくる

持ち上げた構造体との整合も見ながら、新しい基礎づくりです。
基礎はベタ基礎。
湿気対策に加え、ここではしっかりとした剛性確保を目指しました。
  

再構築

全ての構造部材がそのまま使える訳では無く、傷みの程度も見ながら部分的な交換も行いました。
間取りの変更もありますので、計画案に合わせて新しい骨組みを加えながら整えて行きます。
古民家は曲がり梁主体のため、幾つもある接合部はみなまちまちです。
そこに新しい部材を組み込まなくてはなりません。
こういった部分は職人の経験と部材を読む勘がものを言います。
 

 

屋根工事

大きな屋根溝面を支える部材は大断面の登り梁。勾配はほぼ45度の矩勾配です。
駆け上がる直線距離は約8.5m、金輪で継いで掛け渡しました。
新しい屋根は通気工法のため、大きな屋根面が夏場に受ける日射を軽減してくれます。
  

軒裏にはもともと使われていた化粧垂木を一部再利用。
この住まいのアイデンティティーを表しました。

仕上げはガルバリウム鋼板の平葺き採用して軽量化を図り、建物がスッキリ見える様にしました。
旧屋根に乗っていた銅版の鬼瓦を再利用しています。
 

職人達による仕事

旧部材はみな通直で素直な材ではありませんので、現場で刻み、摺り合わせながら仕立てます。
構成変更が生じた部分では旧部材のほぞ穴が露しとなるため、同じ樹種で一つ一つ埋木が必用です。
コツコツとした作業が続き、新しい佇まいが形成されて行きます。
 

 

遊び心として採り入れた小さな3つのステンドグラス。
20㎝角程度のものですが、最終的にこの住まいを引き立たせる大きな要素となります。
 

番外:煤竹再利用

旧茅葺き屋根の下地に使われていた煤竹。
汚れていたもののまだまだしっかりとしており、洗って仕上げのアクセントに再利用しました。
一部は天井仕上材に、一部は階段手摺りの縦格子として。
記憶を引き継いだ、この住まいならではの財産です。
 

 

完成

この古民家の醍醐味を最大限活かす様に柱梁の表現や空間ボリューム/バランスが整えられ、心機一転、風格を取り戻しました。
庭も整え、重厚感のある屋根、漆喰を主体とした外壁が全体の調和を互いに高め合っています。
  

古民家特有の重い感じにならない様明るめの要素・ポイントを設け、モダンな雰囲気に仕立てています。
広い土間空間を復活し、薪ストーブを置いてくつろぎや趣味の間として使える様にしました。
壁に穿たれた3つのステンドグラスは小さいながら空間に表情を与えています。
二間分を一体空間にしたリビングダイニングは、屋根まで吹抜けの大らかな空間にしました。
天井裏に隠れていた立派な曲がり梁を表しにし、オークの無垢フローリングは床暖房仕様です。
建物全体には断熱化され、昔の寒さを感じない様にしました。
建物周囲の豊かな緑の風景を色々な形で切り取り、各部屋から望める様に工夫しています。
  

和室は床/壁/天井仕上げをリニューアルしていますが、構成を変えず欄間や書院、仏壇収納などは再利用です。

建物裏側は主に設備関係が出てきますが、佇まいを持たせるよう意識しました。
新しく屋根に設けたドーマーのかたちが、民家独特の屋根:外壁の比率を持たせつつ居住性を確保する工夫となっています。

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