そろそろ日本の家【03】

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二 権威と格式の記憶

和の家は自然と共生した建築という見方が出来る一方で、たとえば都会のビルに組み込まれた高級和風料亭のような存在も、またひとつの強烈な和のイメージを発信しています。

そこでみられる現代和風の空間はどうも敷居が高く、堅苦しくて落ち着きません。和風から自然の織りなす風情といった要素を切りとってしまうと、このように堅苦しい格式の空間になってしまうのはとても不思議です。実はここに和風が持つもうひとつの幻想が隠されています。それは権威や格式、規律といった伝統的な書院や茶室に由来する空間感覚であり、記憶なのです。このような格式や権威が現代の家庭生活に意味を持たなくなってきたことが、和風に幻想を与えるもう一つの原因なのです。

しかし一方でこの格式や権威に対する概念を尊重しなければならないケースもあり、風習やしきたりなどの関係で和室にある種の格式を求められる事もあります。

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さて、ここまで和風の幻想を生み出している基本要素を2点あげました。もう一度整理してみますと、ひとつは四季の風情をなくし便利で合理的な生活が成立する現代の日本において、四季のしつらえを『発祥の源』とする和風の家がそもそも成立するのかという問題。もうひとつは和風のイメージを形成している格式や権威はこれから将来に渡って意味を持ち得るかという問題でした。

大きく変化してきた日本の社会構造や人々の価値観、あるいはライフスタイルが、和風のあり方を形骸化させています。これらはいずれも建築そのものの問題ではなく、現代の社会システムの問題、あるいは住み手の意識の問題ということがいえます。世の中のシステムを昔に戻して昔の和風を再現するのか。今のシステムを受け入れて新しい和風を目指すのか。我々日本人は重大な岐路に立たされている状況なのです。

(つづく)

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