未来和風の様式【02】

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3:高断熱・高気密な「和風」

近代以降ずっと続いてきた建築の設備至上主義は、ここに来てその評価が大きく変わってきています。エアコンなど設備関係の技術開発から、高性能な壁体材料や開口部部品など建物駆体の基本性能を向上させる材料の開発へとその重点が変わってきました。近頃大幅に普及している高断熱・高気密技術もそのひとつです。

実は今まで日本にパッシブ設計が根付かなかったのは、これまでの一般的な日本家屋に基本性能が不足していたためです。気密性がザル状態の昔の日本の家では、大量にエネルギーを使ってパワーでコントロールする方法しかなかったのです。

現在では高断熱・高気密技術による基本性能の向上で、日本の気候でもパッシブ設計の効果が得られるようになり、また高性能化技術に要する材料のトータルエネルギーコストに対し、得られる性能にも充分な効果がある事も明らかになりました。今後も建物駆体の基本性能を向上させる技術が改良されパッシブ設計の効果が高まれば、「環境共生型和風住宅」というかたちで和風の本質を受け継いでいけるでしょう。

パッシブの基本を支える高断熱・高気密技術は必要不可欠なもの。これからも時間をかけてじっくりと育ててゆかねばならないものだと思います。

4:風通しという基本

日本の環境共生住宅を考えるとき、最も重要なのが通風の計画です。蒸し暑い夏をエアコンなしで乗り切るには、風のとり込みとパッシブ効果で空気移動を生じさせる空間を構成することが基本となります。

もともと日本の民家は暑い夏を旨とし、開放的につくられていました。その方向性はこれからの日本の家にも受け継がれるべき指針だと私は思います。なぜなら冬の寒さに関しては、駆体性能の改善と共に適切なパッシブ設計が実現されれば、ほとんど問題なく解決できるようになってきたからです。

問題は高温多湿な夏なのです。冷房を利用するのではなく「涼房」をつくりだすようなパッシブ設計を行うには、かなり高度な技術が必要になります。ポイントは建物に垂直・水平風洞を組み込むことにあります。この結果できる開放的な重層空間は、伝統民家の平面的な解放空間構成の進化した形と見ることができます。

5:畳の解放

先に、権威や格式あるいは様式としての幻想についてお話ししました。その権威や格式の幻想について、ここでは畳を例に考えてみましょう。

畳は単なる床材のひとつという見方をすれば、たいへん便利で利用価値の高いものです。しかし、いつも長押や床の間がセットになっていると、かわいそうに畳はどうも自立的に発展する機会を失っている気がします。それでも今までこれだけ普及してきたということは、日本人は相当畳好きなのかもしれません。

部屋の中に靴を履いたままで入る欧米の生活では採用しづらい床材ですから、外国人が畳の部屋に羨望の目を向けるのもわかるような気がします。日本人は家の中では靴を脱ぎ、裸足で生活します。このライフスタイルが変わらない限り、畳はこれからも使用され続けることでしょう。

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ところで畳といえば和室、和室といえば床の間という人は多いのですが、あなたの家に本当に床の間は必要でしょうか? あなたはその床の間で何をしようとしていますか? もっと言えば何を期待していますか? そのことを理解する必要もありそうです。

もしかしたらあなたも和風の幻想にとらわれているかもしれません。たとえば居間の一部を畳コーナーにして、座敷のファミリースペースをつくってみたらどうでしょう。我々日本人は、大好きな畳をそろそろ格式から切り離し、新しい目で新しい使い方をしてみるのも良いと思います。

(つづく)

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