未来和風の様式【03】

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6:玄関の見直し

形式といえば、和風における玄関のあり方についてはどうでしょうか。お客様を迎え入れるため、あるいは主人を送り出すための昔からの独立した玄関スペースは、現代の生活において必要があるのでしょうか。

お客様といっても親しい人たちがほとんどで、昔のように儀礼を尽くすしつらえなど徐々に無くなってきています。親しい人たちの出入りと家族の出入りに限定すれば、あまりかしこまった玄関やその続きとしての玄関ホールなど、もしかしたら必要ないかもしれません。

どんなに家が洋風化しても、靴脱ぎ場としてのたたきを持つ玄関という形態を日本の家はずっと守り続けています。靴を脱ぐというライフスタイルは日本の風土にあったものなのですが、このことと現在の形式化した玄関は、必ずしもマッチしているとは言い切れません。

7:土間床の復活

新しい和風を求めるとき、生活に機能性を補う面からも環境に共生したパッシブ性能の確保の点からも、土間床を復活させることをご提案することがあります。

土間といっても昔の民家の土をたたき固めた土間ではなく、くつ脱ぎ空間としての土間床です。素材的には珪藻土やモルタルなどで仕上げてもいいし、タイルを貼っても良いでしょう。床のランクとして、玄関土間よりも上だけど一般の床よりは下のランク、ちょうど縁側くらいの位置にある床でしょうか。

床下をもたない土間の床というのは、建物の足廻りの湿気や腐朽の問題を解決しますし、何よりも建物内部の熱容量の確保という点では都合が良くなります。従来の和風建築はほとんど熱容量を持っていませんでしたから、外気温の影響を大きく受けていました。そこで室内に熱容量を確保することにより、暖まりにくく冷めにくい安定した熱環境をつくるパッシブ性能が付加されます。

1階にプラットフォーム状の土間が設えられ、その一部に畳が置かれているというのはかなり新鮮です。湿気を工法的にシャットアウトして大きな室内熱容量を土間に持たせることで、夏涼しく冬暖かい安定した輻射熱空間がつくりやすくなります。

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8:垂直な縁側

外部環境の整備が環境共生住宅において室内の環境コントロールに必要だと言いましたが、もっと簡単に言ってしまうと、内と外との境界領域を上手に使うということです。

内と外との境界領域というのは、昔の家の縁側のようなスペースです。しかし形式的な縁側は現代の、特に都市型住宅にはなかなか馴染みません。近隣や外の労働空間との接点としての昔の役割から今度は熱環境制御にその意味をシフトさせ、垂直に立てて使うという新しい考え方。それは平面としての縁側ではなく、断面としての縁側(つまり吹抜の一種)です。

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この縦の縁側を利用することで、パッシブな通風や排熱効果を生み出したり、冬の日差しを室内奥まで入れてダイレクトゲインを得ることができるようになるわけです。これは通風設計における垂直風洞とも言い換えることができます。この垂直風洞、実は建物の熱環境を制御する装置としてはとても重要な役割を担います。

(つづく)

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