未来和風の様式【04】

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9:和風を支えるエコエネルギー

かつての日本の民家というと、ほとんど木と土をはじめとする自然素材でつくられていました。良質な木材と土に恵まれている日本ではそのような生産風土が自然に成立し、成熟してきました。この課程で大工技能や左官の技術が文化的価値を形成するレベルにまで発展してきたわけです。

「地場の木を伐採し、大工が木取りをして材を加工し家をつくる」というエコロジカルなプロセスは現在では大きく変化しました。スケールメリットの追求による大量生産方式は、実は大量にエネルギーが浪費されています。遠方から様々な輸送手段で現場に運び込まれる為、流通課程でもまた大きなエネルギーを消費し環境破壊を行っているのです。

その一方、現場では労働力を削減する方向で合理化したため、貧しく細切れの組み立て作業のみが残りました。そこにはかつてのすばらしい技能や知恵、創造力を発揮する余地は残されていません。人間的な労働の本質をすっかり失った、俗に3K労働と呼ばれる現状になっています。

これからのエコロジー社会は、まず人間労働の価値や意義を取り戻していく必要があります。人間の労働力は再生産可能なエコロジカルなエネルギーです。そして労働の本質は頭と手を最大限に使った創造的行為であり、これは本来大きな楽しみと喜びを当事者にもたらすものなのです。

このような本質的労働でつくりだされていたのが本来の和風建築でした。現在でも和風建築が何となく高級に感じられるのは、そこに投入された人的エネルギーの量と質の高さを垣間見るからです。『工業化住宅の対極にあるのが和風住宅だ』というイメージは、まさにこの部分に由来しているのです。

こう考えるとこれまでもこれからも、和風の建築生産現場には、是非ともかつての様に大工をはじめとする各職人が生き生きと働いているシーンを再現しなければなりません。そのような生産社会の仕組みを求めてゆかねばならないのです。

現在、大工・左官をはじめとする職人、そして材料を提供する大元の林業家、あるいは建築家の中にもそのような伝統型生産方法の再編を目指す動きがあります。今だからこそ、たとえば産直の協同組合方式による適切規模のスケールメリットの下に、生産システムを再構築して行く事が望まれます。和風の様式をふたたび大量生産型の商品にしてしまえば、日本の本質的豊かさは消失するでしょう。

sorosoro13

(つづく)

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